不眠症/亜樹
 
今日降った雨が
私を殺した
大人たちは
私から
すっかり夢を剥いでから
つまらない子だねと嘲笑う
雨が降っている
冷たい雨だ
私は何ももっていない
軒下に群がる猫の群れ
冷たい金の眼が
私を排除する
地面はどんどんぬかるんで
終いに私はそのまま落ちていった
落ちた先は
やっぱり(なんの芸もなく)地獄で
赤い顔をした閻魔が私を罵る
いいえ
違います
私は自殺なんてしていません
私を殺したのは雨です
喉に当たる縄の感触も
冷たい刃物の鋭さも知りません
閻魔は許してくれない
そうこうする間も雨が降っている
地面の下だって言うのに
どこまでもどこまでもついてくるのだ
ぬかるみがまた私の足を取る
今度はどこへ行くのだろう
案外地獄の下に天国があるのやも知れない
閻魔が怒鳴る
なんて五月蝿い
片足が沈んだ
もう十分だ
どこかもっともっと深く
この冷たい雨が届かないところまで
早く
雨が


A
a
a


a



zz





zzzzzzzz

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