ポケットと速度/健
始終電車の中で揺れているような一日だった
駅のホームで一息をつく
そんな感覚でベランダへ出て
ジーンズの裾を捲り 風が吹くのを待つ
どこか遠くの方では
花火が上がる音が聞こえている
建物の向こう側にある空を見る方法を
昔は知っていたような気がして
あのころ を作るのに夢中になっていく
定刻通りに帰宅した人々が
今日もまた
この部屋の前を横切って行った
こつこつと足音をたて 一日が遠ざかっていく
握る先のない右手をぶらつかせ
仕舞ったものがこぼれていく その速さのことを思った
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