浪漫通り/亜樹
わたくしは
懐古主義者なので
懐中時計を買った
てのひらに
すっぽり収まる大きさで
二時の後に
六時になったりする
マイペースな銀鼠色の
愛いやつである
『浪漫主義』を
『ろまんしゅぎ』と読んだら
先生が顔をしかめ
「それはよろしくないね」と言った
『浪漫主義』は
『ろうまんしゅぎ』と読むのがよい
一つ賢くなったわたくしは
気をよくして
イロハモミジの小道を歩く
かちりかちりと
不規則な
懐中時計の音につられ
「ろうまんしゅぎ」と
舌先で転がせば
はらりと赤い
モミジが散った
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