花瓶の底、龍の眼(改稿)/はらだまさる
椿の花が首折り零れ 足踏みしていた夜が 膝を抱え込むように小さく、小さくうずくまって いつの間にか シャボンのように消えたので 蛇口を捻って顔を洗い、手に掬った冷たい水を飲んでから、一万、四千二百、十八、九・・・と、ずっと数えていた、気の利かないお前が、薬缶のお湯をバケツに溜めるみたいに 俺の 冷え切った足の指先から、丁寧に舐めているし どうやら俺たちは 秋の深い懐のなかで 迷子になってしまった水鳥のようだけど、飛び方も鳴き方も忘れちまったみたいだし、一番大事なものが足りなくて、息が出来ない、
昨日まで、新聞の記事にもならない下らないわがままで 人生を後頭部で結わえて不貞腐れていたお前と コ
[次のページ]
戻る 編 削 Point(4)