オトシモノ/九鬼ゑ女
 
素通りしていった
過去たちは
しらじらしくどこまでも
甘い余韻をちらつかせる

オチテシマエ
と、あなたが言ったから
女は 有漏に潜ったままで /うろ

もう底はないからと
手を伸ばして掴もうとする無漏に /むろ
生ぬるい滴りを感じて
一口 啜ってはみるけれど


女の落ちた場所は ことのほか仄暗く
オトシタモノハナニ?
思い出したように 女は
目を凝らして 足元を探りはじめた

いまも 余韻に依存したままで
ぎくしゃくとした この感情に
・・・誰も終止符を打てない

そのせいか
ヒロイアゲタコタエ  
は、女の凋んだ胸で
捨てられたばかりの子猫のように  

まだ、
きょとんとしている



       ※有漏…煩悩の状態
       ※無漏…煩悩の無い境地

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