ぬくもり/池中茉莉花
 
私は10年冬眠していた

 走って 走って 疲れてしまったから

 目を開けると

 良人も家族も 老けていた

 みんな 私より 弱っていた


 はいつくばって 鏡の前へ

 私の顔は 老人そのもの
 

 なにも聞こえていなかったの

 大切な人々の 泣き叫ぶ声も


 やっと 私は前に進もうとした

 しかし 身体も脳も 停止していた


 今は ただ 生きているだけ


 こんな私を許してください
 
 体にいつもぬくもりがある
 
 これを保つこと

 それが 私に出来る ただ一つのこと


戻る   Point(2)