「 真昼の情事 」/椎名
 
背中にまわした手のぬくもり
今だけのものだからいとおしい

海に浮かび上がる蜃気楼の街
知らない国の影
手を伸ばせば届くほどに近く
はっきりと

真昼の夢
甘い吐息

目を開ければそこにあるのに
消えてしまうものだから
けして掴むことのできないものだから
忘れたくなくて

小さな宝石箱の中の宝物のように
何度も引き出してみては
溜息をつく
そこにあるのが信じられなくて

いつまで持ち続けられるのか
残り香が
胸を締め付ける

真昼の夢

ひとときの



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