時を刻んで/シホ
 
桜の舞う春の風のもと
初めて出会った君は
もうすでに
大人だったんだよね

夏の灼熱のなか
偶然出会った君と僕
止まってしまいそうな時を
僕はせきたてていた

夏の名残りの秋の陽射し
にぎやかな祭りのあとの
空しさがあって
君と僕とは隔たりがあった

吐く息の白い冬の渡り廊下で
雪とたわむれる僕たちを
君はちょっと
見上げたよね


ひと昔が経って
大人になった僕を
誰が見つめてくれただろう
だめになった僕を
見て 君はびっくりするだろうか

君のやさしさだけが
思い出であるのみ
晩夏の夕暮れの中
時はあの頃と同じように
流れていくのに

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