小鳥の巣/千月 話子
 
四角い鳥かごの小鳥を
人差し指という小枝へ導く

みなみは細く圧迫される指を
目線まで上げて
「この部屋も 鳥かごみたいね」と言う
秋とは名ばかりのあやふやな風が吹き込む
窓辺に吊るしたままの風鈴がチリンと鳴って
東へ傾く太陽の日差しが
表で遊ぶ子供たちの声を
緩やかに 空遠く消し去って
消し去って を繰り返している


小鳥の名は カナリア
オレンジ色のを選んだ
みなみの名前と相性が良いのか
彼は 情熱色の羽を波立たせ
美しい声で求愛するのだ


表札に知らない男の名前を書いた
9月 私達の部屋で
密やかに木々の育つ音がする


四角い窓から小
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