「良い夢を、おやすみ。」/快晴
深夜の小型ナイフの誘惑
それを振り切って走る
傷口の疼きを無視して
このままどこまでも駆けていきたいと願う
しかし私の足は脆弱だ
メロスの勇敢さも持ち合わせてはいない
かつて通学路として歩いた坂道の途中で
大きく肩で息をしながら立ち止まる
住宅街の駐車場で浮遊する黒猫の目
私を一瞥すると尻尾を掲げて去っていく
その毅然とした態度に
猫背などという言葉は似合わない
ジャージのポケットの中には
少しの小銭と煙草、携帯電話
煌々と光を放つ自動販売機で
清涼飲料水のペットボトルを一本買い
その代わりに携帯電話を捨てる
誰もい
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