創書日和「淡」/虹村 凌
季節が変わったのかどうかもわからないような
苛々するこの街を抜け出して
名前も知らないような場所に行こう
もちろん夜行バスか深夜の列車で行くんだ
行き先なんか何処だっていいんだ
北に向かう何処かで途中下車したっていいんだ
僕は持てるだけのノートとペンを
君は持てるだけのカンバスと筆を
小さなカバンに詰め込んで何処か遠くに行こうよ
苛々するものは全部置いていこう
携帯電話も免許証も銀行のカードも
ねぇ
トンネルの中を照らすあのオレンジ色の光は
きっとあの街を照らす朝日よりも綺麗だよ
二人であのオレンジ色の光の向こう側に出て
あの街とは少し違う匂いをかぎに行こうよ
[次のページ]
[グループ]
戻る 編 削 Point(0)