書店員の一日/吉田ぐんじょう
 


朝起きたらまず
しゅろの箒で部屋を掃き出す

すると部屋の隅々から
夢の中で捕まえそこねた小人や
夜のうちに死んだ蝶々などが
硬くつめたくなって出てくるので
プラスティックのちりとりで
ていねいに集めて外へ捨てる

プラスティックのちりとりは
野暮ったい薄紅色をしている

だけどわたしが手に入れた
どんな類のものよりも
役に立ってくれる上
わたしに愛想を尽かさずに
そばにいてくれるから好きだ


部屋の掃除を終えたら
洗顔をして歯磨きをする

口をゆすいだ後の水には
小さなものが
たくさんうごめ
[次のページ]
戻る   Point(11)