両刀論法の彼方に/榊 慧
「両価性などという考えは、全くふざけた考えだ。俺に迷いなどない。」
そう言い切れる豪胆な奴には、僕は敬意を表しよう。
撥ね退ける力が無ければ自分はやがては敗北者となるのだろう。
少年は自分を暫し眇める様に観察してから、ふいと視線を外してしまった。
多少の哀れみと多大な揶揄をこめる。
自分は、その扉を見つめながら、その向こう側には行くことなど出来ない。
これは、戒めだ。
自分は、決して弱くなってはならないのだ。
矜持が、許さない。
あの少年は、何の矜持だと笑うだろうが。
守りたいものが、或る。
屈辱にも似た歯痒さに己を嫌悪した。
[次のページ]
戻る 編 削 Point(1)