まさに或る夢のやうな其れ等/空雪
眠り方さへ、忘れて
台詞を読んだピエロ
其れはまるで画集のやうな戯曲だと
照明係は踊つたのです
窓からの透き間風
静かなオペラを背景に
しゃらん、とカーテンを閉めた、彼の人でした
「欠けたクレヨンは戻ることなく手を染める。
てふてふを御覧、其の真白の軌跡は読めませぬ。
たとへば其れが夜道ならなほさら」
さう言つたのは少なくとも、天使などではありませぬ
其のやうな舞台の裏側で
人魚姫はくちずさむのでした
「真夜中に鐘が十と二つ
呼んだら走つてお帰りよ
迷つたときは おとなしく
私へと、真白の紙飛行機を飛ばしませう」
さうして溜め息を吐き
人魚の座すべき海をどかした
無口な演出家
ただ一言だけ呟いて、
溜め息を深呼吸に変えて
舞台を
輝かせたのか、眠らせたのか
ぼくは 知らない。
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