たばこ畑/蒼木りん
と
電話をしていた。
その年の夏に 大型の台風が来て
たばこを乾燥させていたビニールハウスが潰れたのだ。
仕事で不在の父のかわりに 母が雨に濡れたたばこを運び出した。
私たち子供も 風雨の中 運び出しをやったが、限界だった。
苦労が 水の泡になった。
潔い声は 一つの長い苦労からの開放だった。
そして もう、
次の年のたばこのことを考えなくてもよくなった。
実家の近くの、
今では 数が減ったたばこ畑は いまごろ、
緑の葉を大きく茂らせていることだろう。
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