たばこ畑/蒼木りん
昔、
稲作とたばこ農家だった実家は、年中忙しかった。
周りの家も農家で どこも稲作とたばこをやっていた。
その上、
周りのように専業ではなく、実家の両親は共働きだった。
兼業の兼業のようなもので 農家の長男の嫁の母の苦労は
並大抵ではなかったはずだ。
母の話ではない。
祖母の話でも 祖父の話でも 父の話でもない。
夏近くに たばこの花が咲く。
ピンク色の可愛い花が 一列に並んだたばこ畑一面に咲く。
でも、
首切りのように 花は全部切り取られてしまう。
たばこ畑を歩いていると 服が黒くなる。
ニコチンの分泌液で 葉や茎の表面はベタついている。
そんな厄
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