しずかなあいのしらべ、/哀詩
静粛な雰囲気に耐えられない
縁側でぴしやり、汗がしたたると
しわだらけの手はいつも布を差し出してくれる。
スイカの種が萌芽するころ、
白い手ぬぐいのぬくもりをわすれて
塩分ばかりをこころに落としていく。
夜風がつめたくなりだしたら
きっと君はここにいよう、
まるで空気のように、それは重厚な生をまとって
君はここにいよう。
木々が芽吹き青々とする視界に
君の影、すがたをすこしとらえよう、
それはきっと君が残していく君のすべて
ほら、君はここにいよう。
また縁側を訪れれば騒音もしん、とし
縁側で種を共に飛ばす君は居なけれど
君に捧ぐ香がはなにつこうとも
君にはせそんずることばがこころ紡ごうとも
きっと君はここにいよう。
君はここにいよう。
戻る 編 削 Point(3)