しずかなあいのしらべ、/哀詩
 


静粛な雰囲気に耐えられない
縁側でぴしやり、汗がしたたると
しわだらけの手はいつも布を差し出してくれる。

スイカの種が萌芽するころ、
白い手ぬぐいのぬくもりをわすれて
塩分ばかりをこころに落としていく。

夜風がつめたくなりだしたら
きっと君はここにいよう、
まるで空気のように、それは重厚な生をまとって
君はここにいよう。

木々が芽吹き青々とする視界に
君の影、すがたをすこしとらえよう、
それはきっと君が残していく君のすべて
ほら、君はここにいよう。

また縁側を訪れれば騒音もしん、とし
縁側で種を共に飛ばす君は居なけれど
君に捧ぐ香がはなにつこうとも
君にはせそんずることばがこころ紡ごうとも
きっと君はここにいよう。

君はここにいよう。

 
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