水は炎を消した/狩心
あらゆるものから離れて佇む時
落ち葉のソファに横たわる
この皮膚感覚だけが頼りだ
あらゆるものは絵画の如く
静止している
そこに漂う空気は氷のように張り付いて
追いかけてきたものを思い出す
男は妻の後を追うように
空の彼方に消えていった
追いかけるものを見失った時
はじめて試される
個としての自分
点線を実線にして
何度も折り畳んだ
歴史の窓を
抜け落ちた髪の毛は変色し
密かに語りかける
あなたが愛用した帽子と
それによって遮られた
ほのかな太陽の光について
煙草の火を消すときに
指先を火傷してしまった
動き出す時間
雑草の生えた歯車が
自分に何の関係もない
テレビ番組の雑音とリンクする
彼らが笑うのと同時に私も笑ったが
本当は笑えなかった
束の間の時間
水分を吸収し過ぎて
逆に乾燥していく肌と
顕微鏡で落ち葉の中にいる微生物を
確認するような作業が
個としての私を
苛立たせた
家が立ち並び
車が止められている
キーホルダーにアニメのキャラクター
空を見るたびに思い出す
私は一人だ
[グループ]
戻る 編 削 Point(1)