エタノール・ラジオ・ブレイク/佐藤清児
透き通るアルコール
血脈を流れる躍動に
音にならない声は空を切る
ある日、真昼に映った少女
ラジオが空を飛んでいった
気違い染みた水族館に浮かんで消える
プランクトンやら光の粒子やら
やっとのことで理解できるのは
水母やら水泡やらが意思を持ち
血脈を流れる躍動のように
生きていたということ
理科室の水槽に流れる
少女の歌も澄んだ朝の瞳も
ある日、やがて消えていく
葉脈を削ってアルコールに浸したら
紫色に染まって
新しい世界が生まれた
消えていくものは全て
新しい世界に生まれた
真昼に映った少女
影から逸脱して
穢れた水溜りを泳ぐ
ある日
うわの空で
ラジオを蹴飛ばした
夏の日の出来事
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