美しかった国/いとう
 
ラブ&ピースという呪いが生まれたのは
それからしばらくしてのこと
僕たち、と言ってさしつかえないのなら
僕たちは
やはり
気づいていなかったのだろう
それが呪いであることに
ではなく
世界に
呪いというものがあることに

僕たちは旅と呼ばれるもので
人生を堪能していた
果てはないと思ったし
実際に果てはなかった
湾曲する世界の中に
果てなど存在しない
その歪みの中で生きている限り

世界と闇は
構造がとてもよく似ていて
たとえば
そこに含まれる限りそれを認知できない
僕たちのすべてはいつも
成分としてそこにあり
分かたれてようやく
その事実を知る
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