Dont't stop the rain./汐
られて居たのが某ビールの段ボール箱だったので、其処から拝借した安易な名前だ。
夏に生まれたから、ナツオ、の僕も又、充分安易なのだけれど、何て。
「君は自由気儘で羨ましいよ。」
抱き上げたアサヒは結構な重量だ。其の儘、風に当たる為ベランダに向かうと、丁度雲の隙間から三日月が顔を覗かせて居た。
洗濯物を取り込まないと。と思う。こうして居ると、僕は不謹慎乍ら此の生活も其れ程悪くないな、と感じる。昼間の憤りが、夕方を経て夜に為ると呆気なく収まり、心が穏やかに為るのだ。会社を巧く遣り過ごせずに辞めてしまった罪悪感も、僕が為すべき事は何処かに必ず有るんだ、と改めて思うと随分楽に為る。
何処までも、安易だと、猫の眸が僕を微笑う。でも、そう考える他に僕は僕を救う術を知らない。
何方にしろ、戻る事は不可能なのだよ。
アサヒは欠伸を一つ漏らし乍ら、涙ぐむ僕にそう告げた。
(雨が、止まない
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