誰かのことばかり考えている/吉田ぐんじょう
 


口に酸素を含んでから
目を閉じて
美しい光景を思い浮かべる

すると酸素は舌の上で
ばらの味の二酸化炭素へ変わる

誰かがわたしに口づけしたときに
いい気持ちにれなるよう

常日頃からわたしは
美しい光景ばかり
思い描いて生きている



かかとの高い靴は
なるべく履かないことにしている

目の前で誰かが転んだら
すぐに駆け寄ってやれるように

又は
誰かがいじめられていたら
即座に鮮やかなかかと落としを
いじめっ子の脳天に
きめられるように

かかとの低い靴は
あまり恰好のよいものではないが

目の前の人も守れないで

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