星状体/佐藤清児
まだ誰も手入れをしていない花壇に芽生えた
幼いクローバーの透き通る葉
働き終えた男たちが
その角ばった手で
その角ばった心で
その柔らかな葉を千切り捨てて
去っていった
二度と見返ることなく
そのとき
晴れ上がった上空で
澄んだ一羽の白い鳩が
銃弾に羽根を焼かれた
守るために働き終えた男たちの頭上に
血に染まった羽根が降る
昼頃まで騒がしかった木々の声が
一層激しくなった夕暮れ
天使になった子供たちが
一斉に涙を流す
母の名を叫んで
時を刻むごとに
雨が激しくなる
幼い葉脈からは
血液が流れていった
全てが寝静まると
男たちは夢を見ることなく
何も言わず目を閉じて
土に沈んでいく
その夜は
約束を忘れなかった星だけが瞬きを繰り返していた
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