日が昇る前の、一日の始まり/狩心
昔はよく強風でガタガタ音を立てていた窓
今はすっかり静かに落ち着いてしまった窓
家の所々の窓は割れているものもある
新しいものと取り替える必要はない
割れた場所から外の空気が入ってくる
それを頬で受けて耳を澄ます
窓から外を見れば
昔と変わらない風景と
昔とは違う風景が混在している
地震で傾いた家
その傾きを見れば
表札なんかなくても
誰の家か分かる
壁や柱には焼け焦げた形跡
度重なる火事のなか
全焼は辛うじて免れている
焼け焦げた形跡を見るたびに
その時のことを鮮明に思い出す
今まで出会った全ての人々の声が
部屋の中で反響している
それをやや騒がしくも思う
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