背中/東風
 

「蹴りたい背中」なんてのがあったけど 長身の彼の背中を小柄な私が蹴りつけるのは容易ではなくて
大抵は悔しさをまじえつつ自分でも頼りなく思える手のひらでその背中をはたくだけなのである
だけれどそれで私と彼の釣り合わなさが消えるわけでもなくてやりきれなさは度を増していくのだ
なんだか怖くなって彼からすれば軽いイタズラしかし私としては冗談じゃないほどの強さでまたはたく
幼すぎる自分とそれすら笑って受け止める彼にまた距離を感じてしまってそれがまた悔しい

悪循環である本当に誰よりも好きだからこそなのに

だから彼も笑っていないでこっちを向けはたきたくなるような背中をみせるんじゃないと想いを込めてまた はたく 。
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