名前/
路守 緒世留
一つとして同じ貌をしている者は居ないのに
名前まで持つ事を考えるなんて
先人は随分と神経質
神は思いのほか手抜きをしないし
誰かが死んでしまえば
同じ貌が生まれても何も起こらない
名前は時折自分の身の上を語り出す
それもやたらと長々しく
それについて貌は何も言わない
何者とも同一になってしまう恐怖を知らないから
名前はきっと
自分と総てが同じ者がいることに怯えている
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