気球観測/南 広一
ていきあつていきあつ
と いっしんに唱える、
上空を
旋回するビニールの屋根
めがけて
いっせいにひかりは弱まった。
自転車にのって上昇したのだ
こどもたちは眼下にひろがって
車輪の熱は大気に打ちあがる。
濡れている
安らかな顔をした
星を返せ、と黒光りする
屋根はいつも孤独だった。
あきらめたように
かたつむりが土へ還ろうとする
雨はまだ降らない。
軒下から立ち上がってくる
その
虫たちの息遣いに耳をあてると
こどもたちが手を振る
わたしの手足も揺れるようだ
そしてもういちど
濡れた花火が打ちあがって
静まり返った空の上から
わたし、と声にしてみる
なにも無い、
もうなにも無かった。
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