「 当世触場事情、其の一。 」/PULL.
この触場に来て、今日で三ヶ月になる。あたしにとっては二つめの派遣先だ。前の派遣先では何かと上手くいかなかったので、ここに来られて、本当に嬉しい。
触場へは自転車で通っている。
バスで七駅の距離なので、バスで通勤してもいいのだが…ラッシュの中で知らない誰かの触手と擦れ合うあの空間に、どうしても慣れることが出来なかった。
「あんたのは特別敏感だからねー。ひょっとしてさ、感じてるんじゃないの?。」
マイカー通勤のユリさんはそう言って、あたしをからかう。
ユリさんは触場の先輩だ。あたしとは違う派遣先から来ていて、今月で四年目になる。「オツボネ」と言うには
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