秋雨の土曜日、僕は本を捨て部屋を出た。/
 
生日に買ったんだよな、俺はもう、抜かりない御前の事だし随分時間も経ってるからとっくに売ったんじゃないかと思ってた。」と嘲る低音がやや遠巻きに聞こえた。
そりゃ、少しは売ろうかとも考えたけど。そう言い掛けて僕は、君の何気なさ過ぎる言葉に眸を丸くした。
「だけど、なんだか、ありがとう。思えば贈り物の所在なんて、確かめることもなければ贈ったことも忘れるからな。」
 ありがとう。だって。僕は幾分嬉しくなって、靴箱に立て掛けたビニール傘を掴んだ。
思えば君は昔から、頭は弱いけれど、晴れ渡る空みたいにとても気持ちがいい奴だった。
 ポケットに財布、右手に雨傘、左手にはあのCD。
僕は、久し振りに片道三時間を遠乗りするのもいいな。と君に告げては電話を切った。

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