存在/路守 緒世留
私は知っていて
私しか知らない
台風の後の空が必ずしも濃い青色でないこと
綺麗な夕焼けの次の日に必ずしも晴れるわけでないこと
私の部屋の扉は放っておくと風で閉じてしまうこと
公園の木の大きな瘤に穴が開いていること
全部私しか知らなくて
私には何の得も無いこと
そして私は得の無いことで
作られていると言うこと
私しか知らないこと
そして誰も知らないことの存在を知らないこと
私も知らないことの存在を知らないこと
全てを知るのは無理だと言うこと
それを少し悔しいと思うこと
戻る 編 削 Point(1)