溢れる二の腕/A道化
手の甲を
濡れ遅れた微熱にあてがう
初夏だなんて
初夏、だなんて
密度を増しゆく空や緑を背景にしても尚明るく
誇るように明るく無数の二の腕が溢れていて
その無邪気さ、罪は無いけれど、罪は無いけれど
ただ、青ざめた肌を隠すような摩擦を
それでいて、守るような摩擦を
私だけが
私だけに
ああ、ひとびとの
添う袖口の湿り始めの初夏の、明るい微熱が連続し始め
露わである事がどれほど正当化されても
私だけは私だけを守るような隠すような
私だけは私だけに摩擦を摩擦を摩擦を
摩擦を、摩擦を、摩擦を
ああ初夏だなんて
ああ、初夏、だなんて
手の甲を、やっと濡れ始めた微熱にあてがって
摩擦を、摩擦を、摩擦を
2004.5.30
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