潮騒の丘/灯兎
窓を覗くはにかみ屋の風
夕涼みの教室で戯れる 置いてきぼりの陰法師
季節外れのうぐいすの声を聞きながら
紡いだ詩をただ砂場に埋めていく
鳴らない鐘に聞き惚れて 翼を運ぶことさえ止めてしまった
不妊症の海が鳴らす潮騒
閉じた眼に焼きついた 繋がれたままの白い舟
向こう岸の丘を見つめながら
いびつな砂を愛しげになぞっていく
自愛に絡む慈愛の糸に 織り交ぜるのは甘い蒼
上弦に傾く月が掘り出す 陰影の一歩手前
夜を焦がす虹に見守られて 淡い星が灯った
翼が奏でる唄に 打ち寄せる波に
重ねた足跡がさらわれる前に
世界一短い誓いを 石に刻み込もう
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