閃光/久遠薫子
空がパッと閃いて
少しあとで雷が鳴った
昨日も今日もたおれそうに暑くて
夕立でもあれば少しは何かを思い出すかしら、と思った
この邪魔なおくれ毛は刈りあげるべきじゃないかしら、と思った
すぐ脇を通り過ぎる車も
みんな焼けただれていた
昨日も今日も泣き出しそうに暑くて
おとなしく礼儀正しい人間は丸い月夜ではなく
真夏の白昼まばたきする間に狂気が閃くのだ、と思った
バス停のベンチが溶けたあとには
奇跡の花が咲く
たぶん後ろの木のほんのすぐそこでは
澄んだひぐらしの音が
かなかなかなかなかなかなかなかな かな かな かな
おまえも心配なの
[次のページ]
戻る 編 削 Point(10)