美術室/山中 烏流
夕刻を告げる時計が
散らばった色鉛筆を
一本だけ、手折る
私がその光景を
消しゴムへと告げ口した頃
光りだした小指は
小さく震えて、色鉛筆となった
立て掛けたキャンバスには
油の香りだけが
悠々と、漂って
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踏みつけた音が
私の鼓膜に住み着いている
にしゃり、と
湿った音をたてて
床と同化したそれを
私は見ないようにした
白を描くための
小さな塊を千切っては、
鼓膜へと詰め込んでいく
にしゃり、にしゃり
まだ、聞こえている
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石膏の名前を
私が知るこ
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