両親/小川 葉
夢を見ていた
はっと目をさますと五郎さんが
丸太小屋が焼けた
けれどもおまえのせいじゃない
そう言ってラーメンを食べながら
泣いていた
蛍光灯を消したまま
月のあかりで
その日の出来事を日記に書く
月食がはじまれば
わたしはまた夢の世界へ戻った
少年が
大好きな自動車の名前を
いくつでもおぼえつづけるように
少女も
ゴム跳びの遊び相手を
日が暮れるまで探している
けれどもおまえのせいじゃない
二人はわたしに言うけれど
声を枯らせば余計につらく思えて
夢の世界が
現実の世界に飲み込まれた時
はじめて世界の全容が
あきらかになることを知る
あの大きな父と母が
子供みたいな顔をしているのだ
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