遅れてきた少年の一切合財(その一)/生田 稔
 

本当にそうだった
虚飾も見せびらかしもあってもなくてもよくて
やくざのかっこ良さ
チンピラが本当のやくざだと、今でも思う
律儀にぼくもかれらも小さい仁義をそれなりに守った

彼らとも別れなければならなかった
貧乏医者でも世間体があって
いつまでも不良チンピラやくざ
ではおれなくなって
そんな世界も高校ぐらいになるといやになって
青白いインテリーは嫌いだったが
学問をやってみとうとおもいたった
孔子もそのころだったという、
漢字はだいぶ読めたが、ほとんど書けず長い間の勉強ぎらいで、
自転車の無灯火違反でひつかまつた時
始末書の住所が書けない
仮名でごまかしたと思う
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