Tシャツ/夕凪ここあ
 
あの
見慣れた朝は
履き違えた
靴それだけで
不器用に
ほつれてった

夏が終わる日

あなたに
手を伸ばして
どうしたって
届かないのは
陽炎に
よく似た
寂しげな
笑い方のせいだよ
きっと

夏が終わる日

私の海は
さよなら
どんなに
小さくつぶやいたって
たったそれだけで
溢れて
しまうくらい
危なげに
揺れてた

しまいには
少し大きめの
Tシャツ
夏の匂いで
むせかえるほどのさ
はためかせて
まっしろに
取り残されてく
過ぎてった
ベランダで
いつまでも
夏の音を
聴いてる

思えば
記憶の海で
あなたはいつも
ビー玉の
透明な色をして
陽炎に
きらきら
しながら

夏が終わるのを
寂しそうに
ながめてた
戻る   Point(6)