秋のぶらんこ/石瀬琳々
 
近づいてゆく
風が乾いた草の匂いをはこんで
近づいてゆく
滅んでゆくものの気配を
怖がらないで足をのばし
サンダルを遠くに飛ばして
近づいてゆく
秋のサテンのやわらかな手触り
私はこのままで抱かれていよう


遠ざかってゆく
空がどこまでも白い雲をはらんで
遠ざかってゆく
熱い流砂のきらめきを
忘れるために手をのばし
スカートをゆるやかに舞わせて
遠ざかってゆく
夏のレースの静かなきらめき
私の中でそっと手をふろう


さあ そろそろね
といって私は着地する
しっかりと踏みしめる
秋の感触を はだかの足で



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