あなたがとおい一日/哀詩
朝日は頬をたたくように照りつける。
ぐしゃぐしゃの髪をさわると、
よく頭を撫でてくれたあなたが想われる。
素敵な朝は、さみしい気持ちでみたされる。
顔を洗って、太陽に引っ張られた頬がうるおうと、
少しばかり涙腺もゆるむ。
(その後は他愛のない話、会釈、解釈、愛想。)
帰ってきて、着替えると
あなたがほめてくれた服の香りに埋まる。
うつってしまわないように、箪笥の一角を隔離して、
こいしい気持ちとしまってしまう。
夜になって、ベッドにはいると
あなたが触れたあたしをたしかめる。
数えきれないくちびるが、
あなたをいっとう遠くに据えてしまう。
かなしいおもりはベッドにしずみ、
こごえる夜は己の体温でおぎなう。
いとしいあなたの顔は、声は、
(なんだかぼやけていて今にも忘れそうなのに、)
夢の中、はっきりとあなただとわかるの。
しらないきもちに追いやられると
視界がぼやけはじめて、
また朝がくる。
(かなしみに慣れはしないことを、あなたは今になって教えてくれている。)
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