やさしみ/
AB(なかほど)
そんな事も知らない間に
大人になったので
泣き屋に
ひとつのパンで
泣いてもらった
それでも
わからない顔をしている僕に
泣き屋は
パンを返してくれた
彼女は家に帰ったら
本当に泣くのかもしれない
そう思うと
雨が降ってきて
コオロギの声がして
月の影がゆるんで
流れ星が止まった
そのパンは固くなってしまって
食べるには
自分の涙が必要だった
さよなら
さよなら
泣き屋はもういないよ
と
エジプトの星が歌っている
fromAB
戻る
編
削
Point
(3)