晩秋/明楽
 
こすってもこすっても
とれぬ三日月の影を
外套の裾にまとわりつかせながら
深淵なる闇の中を 独り歩く

遠くに見えるはおぼろげな光
温かき人の光
手元にゆらめくはうつろな光
冷たき心の光

帰る家を探し求めて 彷徨い歩くこの足は
もうすっかりすりきれて
我が身を支えることすら ままならない
墓場で拾った 卒塔婆を杖代わりに
今日と言う日を繰り返す





1998


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