遠ざかる夏/soft_machine
全て乾いて
回り続けた
車窓に滲んだレールの錆が
鵲の群尾に一つ文字を願い 回る
回って、それは
草みどり 瓦屋根
白熱灯と傘 老女の舌先
流れてゆくのは
車窓に滲んだレールの錆が
県道三○一号線の朱に解ける午後
欄干をはだかの少年がバランスよく渡る
矢部川の支流に飛び下り
透明な太陽が飛沫を上げ
耳納連山の痩躯を揺する
棚田の幾つかは人手なく涸れて
コブラの飛行演習だけが盛んで
発電所はいつの間にか送水管を無くし
遠く街の方から巨大な煤煙が見ていた
レーダーサイトに反射して
あなたは それが美しいと言って泣く
問い掛ける
回り続けて
何かの
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