夏葬/明楽
 
夏の重みに
耐えかねた蝉たちが
ぽつり
ぽつりと
落下してゆく


どこまでも
真っ直ぐな彼らは
受け流すこと
なんて 知らず
真っ向から
夏を
受け止めるから
一週間
それだけしか
耐えられない


したたかな
生き物たちは
受け止めること
なんて せず
ひょい と
夏を
受け流すから
何度も
何度も
繰り返している


自らを全力で
受け止める蝉たちが
夏は
いとおしくて
切なくて
全ての蝉が
落下した日
静かな雨を残して
彼らの後を追い
どこか遠く
知らない場所へ
消えてゆく


したたかな
生き物たちは
夏が
残した雨すら
受け流し
消えた夏を
無遠慮に探し
惜しみ
それから
背伸びしてまで
翌年を
眺めている


夏の重みに
耐えかねた蝉たちが
ぽつり
ぽつりと
落下してゆく





2005.8

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