遥か遠く、石垣を超えて、領地の蔦や拱門を潜り、黒々とした音楽の額、あの頑健な器量が、走り去っていく、夏の草花の翳にしたたって、一帯が、ほの白く、昔からの習慣により、光る丘の斜面の下に、「未知」が、流れにふるわせ、座りこんだ、開かれている、「書物」―、この世界観を支えあうには、また戻るという、表と裏の、競いあう大地だ。悔いも、驕りも、真実も一切が消えてぶら下がる木戸も、ミリンダ風情に添い伏して、妻子の離れて暮らしたやせこけた光の悶着も、慰労なき徳のある目方のありがたい到着で、午後から午前への、オレンジの汗さえかかせもしない、尻尾の下で、ダンスして回る、そうだからこそ、空からは長大なおまえが、横倒しされたようにぴくりとも動かない。
春よ、扉の向こうに誰がいる。―これにしたって高尚さも考えにない、煌々と音が契れた、みえはしない空の下となっては、空間と錘の課されたお決まりの芸術家たちの児戯じみた悪口と妄想でお役御免が関の山だ。