夜中の十二時/乱太郎
 
一行が零れてきそうな
静けさに
眠りなさい と
夜は耳元でささやく

白い羽を揺らす誘惑に
応えようとする肉体
沼地の底に落とされるかもしれない
そんな不安は
片顔隠した月が
煙草の火で揉み消してくれる
信じようとする片方の右足

左目は
星の瞬きに我を忘れて
瞼を閉じようともしない

白鳥が舞い降りた湖では
白い鍵盤のレの音だけが
蝶に変身して
辺りをふらふらと

二行目が
落ちてきそうになると
どこだか分らない
夜の振り子に揺られだす
銀河鉄道に乗せられたみたいに

右目と左足も
切符を片手に寝台に横たわる

やがて
夢の世界で起き上がり
気泡になって
浮遊する言葉に弄ばれる

朝が連れ戻しに訪れるまで

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