「熱帯夜」/ソティロ
 
「熱帯夜」





窓を開けても風がないから空気が留まっている
モンスーンが南方から官能や昏いものの香りを
運んできたのだけれどそのリズムはこの部屋で
止まって
澱んで
行き詰ってしまう


夜の濃度が増していってからだはそれについていかない
酔ってくたびれてしまう
そうして
夜はまだまだ膨らんでいく



今日の昼間
蝉の死骸をいくつもみた
こうこうと照らされた
アスファルトの道路の上に
からからに渇いて
転がっていた
六本の手足を律儀に折り曲げて
渇いていた
もし足があたれば
かさかさと音がして
少し転がっただろう
踏みつければ
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