最初の海/楢山孝介
http://www.quilala.jp/prize_bn.html
で読める掌編小説『最後の海』の、時代的には前の話。
読む順としては『最後の海』からの方が理想的。
海で泳ぐと
鮫に食べられるよ
そう言って
あいつは泣いた
僕が沖まで
泳いでいくのを
泣きながら
あいつは見ていた
鮫なんて
とっくに絶滅したのに
海はどんどん
干上がっているのに
あいつの中の海は
いつまでも昔のままで
亡くなった父親が聞かせてくれたという
荒々しくておどろおどろしい海のままで
波打ち際であいつが
水をちゃぷちゃぷやりながら
あんまり心配そう
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