肺をみたす(水葬)/アオゾラ誤爆
 
水中ではうたもうたえない 
だけど泣いたってわからない 
ささやかなゆれはわたしの体温になって 
さかなたちの集うよるがくれば 
ふやけた指先からあふれていく 
あらゆる目線の延長上には 
おなじだけの朝をまつ手段がうかんでいる 
手にとれるおもさの限界で 
ひろいきれなかったきみの成分は 
ゆったりとした波の中で 
つぎ足すことのできない、ゆいいつの幸せのかたち 
さみしいと口にすれば 
心臓はうごくのをやめて 
この柔らかなくちびるからは 
生ぬるい海水が浸入(はい)りこむ 
だまったまま水底に沈んだら 
ひかりもやみもとおくなって 
だれかの声がこだまする 
ねえ、きみ
 
息継ぎのやりかたを 
ずっとおしえてくれなかった 
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