天球へ/こしごえ
 
真夏に日車は、咲いている


雷鳴の空を裂く。
轟音で目を覚ます
一輪車に稲光りが青白く反射する
一瞬で葉陰の殻は黒焦げになり
焼けた臭いに鼻をひる
傘の骨はしろがね色で
死灰(しかい)の暗さを支えているのだ
その時から、

黙秘している夜行列車の無告が
息継ぎをする無人駅には
生まれたばかりの切符を切る音

精神統一をしているサーカスが
空中ブランコで交わるが
質量不足で滲んでしまい感無量

あってはならない
大空が焼けおちるなんてことは
道化師の手には造花が一輪
浮上へ沈下しながら溺れているし
車掌のポケットには錆びた笛
発車時刻は静止し
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