「 マグロ退治の午後。 」/PULL.
 
あたしにマグロを迫っている。
 寿司の通は大トロじゃなくて中トロを食う。父のうんちくが甦る。父はあの日、あたしにこうも言った。だからおまえは中トロのように脂の乗った、上品な味の女になれよ。だけどお父さん。あなたは、大トロのような女と駆け落ちした。
 大トロでも中トロでもないあたしは、玄関の前にいる。扉の向こうで、マグロ男が言った。
「オデカケデスカー。」
 あたしは答える。
 ええ、マグロを退治に扉の外に。












           了。


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